次に、この「結合水」の概念に基づいて、建材劣化のメカニズムを究明してみる。
   
  さまざまな結晶からなる地球上の物質は、その生成年数に関わらず、多少なりとも「結合水」を含んでいる。逆に言えば、物質を構成している結晶は、この「結合水」のおかげで、かろうじて安定化を維持しているといってよい。木材が朽ちるということ、または金属が「金属疲労」を引き起こすということは、結晶間に安定性をもたらしていた、この「結合水」が、経年変化によって徐々に崩壊・蒸散していき、ある含水率を下回った時点から、物質の結晶間の剛性が一気に崩れ始め、その物質が内部崩壊しはじめたことを意味している。

 法隆寺に代表される歴史的木造建築に使われている天然木には、1000年を経てなお、じっくりと穏やかに蒸散し続けている「結合水」と、分子をしっかり結合させ、安定化させている「結合水」とが、まさに理想的なバランスで含まれており、その並大抵ではない耐候性が維持されているといえる。科学的教科書もない時代に、そうした優れた耐候性をもつ天然木を見出し得た先人の知恵に、私たちは脱帽するばかりである。

       
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